記録について

最近のマスコミの報道などで、「記録の改ざん」が取り上げられることが多くなりましたが、読んでいるとどうも「記録」の意味があいまいなまま使われているような感じがします。
「文書」と「記録」については旧「ファイリングの部屋」アーカイブの中の『4-6.文書と記録』で、かなり詳細に触れていますが、ここでは別の角度から書いてみます。

「記録」とは

「記録」の辞書的な意味は、『き‐ろく【記録】1.のちのちに伝える必要から、事実を書きしるすこと。また、その文書。特に史料としての日記・部類記の類。2.競技などの成績・結果。特に、その最高のもの。また、物事の状態・結果などを数値で表したもの。レコード。』(広辞苑第6版。第7版でも同じ)です。文書情報管理ではおもに1のものですが、2の後半にある「物事の状態・結果などを数値で表したもの」についても、「実験記録」や「検査記録」などとして取扱います。

記録の取扱い

一部のの人たちの中には、記録とは承認されたもの(承認印が押されたもの)のみを意味していると主張していますが、これは記録のごく一部にしかすぎません。この人たちが記録としているものは、報告書や決済が終わった書類などで、文書管理部門や公文書館などに移管するものをイメージしているようです。
このような場合は、記録は書き換えてはいけないものであり、これを行うと「改ざん」したとされ、記録そのものの信頼性はなくなってしまいます。
この書き換えには、記録の一部を削除する場合や一部を追加するだけのほか、追加と削除を同時に行う書き換えがあります。

しかし、すべての種類の記録についてこれらを行ってはいけないかと言うとそうではなく、新しいデータを追加する場合や、データを補正する場合などでは、正規な手順を踏んでいれば、許される場合があります。

例えば、倉庫にある物の棚卸を1日かけて行っていた場合、午前中の仕事が終わり昼休み休憩に入った時、午前中に調べたものは記録かどうかは、ここで承認印を押さないため、記録ではないと言う人もいますが、これは誤りで、立派な記録です。
但しこの記録とは、広辞苑での説明の後半部分の「物事の状態・結果などを数値で表したもの」に該当しており、立派な記録です。
午後の棚卸に入る前に、ごぜなちゅうに調べたところを見て、異常と思われる値となっていた場合、その部分のところを再チェックし、数え間違いや書き間違えなどがあった場合は、そこで修正を行います。

棚卸が終了し、一定の書式としてこのデータを纏め責任者の承認印をもらったら、そこで初めて広辞苑での説明の前半部分の意味に変わります。
記録と言う言葉が、どのような意味で使われているかを見極める必要があります。

「測定値」について

実験や検査などで測定したデータを実験ノートなどに記入し、それを記録とした場合、それを書き換えることをしてはいけませんが、その値を修正し、修正した値を正式な値とすることはありえます。

測定器そのものはある程度の誤差を含むものであり、また測定条件によっては、その条件を加味して補正することもあります。
たとえば、液体が沸騰する温度を正確に測る場合、温度計で温度を測りますが、その温度計は校正事業者が発行した校正証明書が付いた標準温度計と比較して補正する必要があり、さらに測定時の気圧によっても補正します。そしてこれら補正した後の値が正式な値となるわけで、厳密な測定ほど、いろいろな補正を行うこととなります。