フォルダーの利用

書類は1枚だけのものから、複数のページを綴じたものまでいろいろな種類のものがあります。これらを整理するためには、同じような種類のものをまとめ、このまとめたものをキャビネットや書類棚に整理します。書類をまとめるためには、下図の左側の書類を挟むだけのフォルダーや右側のバインダーが使われます。
バインダーはただ挟み込みだけであり、この中の書類の順番が入れ替わったり、一部の書類を紛失してしまう危険性がありますし、1つのフォルダーではせいぜい100枚程度の書類に制限しないと取扱いが難しくなります。。一方バインダーの場合はこれらの危険性はなくなるものの、書類の量にかかわらず一定の厚さのものを利用せざるをえず、必要以上に場所を取ってしまうこともあります。


ファイリングで通常説明されるのは上図の左側の書類を挟むだけのフォルダーだけで、右側のバインダーについてはこのようなものもあるとし、完結した業務に関するものをまとめておく程度の説明しかなされていません。

しかしバインダーは、時々参照しなければならないようなものを纏めておくのに向いています。たとえばマニュアル的なもの、便覧のようなものですが、これらは電子化(データベース化)して利用すべきものでしょう。

フォルダーの整理


フォルダーには同じような種類の書類を入れるのは当然ですが、このフォルダーはの整理については、どのようにすれぱ良いのでしょうか。

1つのフォルダーにいれる書類の目安は70枚から80枚とし、最大でも100枚とされています。これ以上の書類を入れると厚くなりすぎて(普通の書類では100枚でほぼ1cmの厚さとなり)取扱いに困るようになることと、この中から必要な書類を選び出すのに手間がかかるようになるためです。

ほとんどの説明ではいろいろなフォルダーを、大分類、中分類そして小分類の3段階として整理することが説明されます。たった3階層かと思われるかもしれませんが、ここで整理するのはオフィス(事務室)単位であり、ほとんどの場合、これは課単位だあったりグループ単位て全社的に見た場合は、この上にさらに1~2階層が存在します。
電データの場合も、紙の書類と同様に分類するようにと言われますが、電子データを保管するファイルサーバーの場合は全社的、あるすは事業所別に置かれたサーバーを利用する場合が多く、この場合は大・中・小の3階層の上に、部や事業部などの階層が上乗せされます。

「ワリツケ式」と「ツミアゲ式」

フォルダーを具体的にどのように分類するかについては、「ワリツケ式」と「ツミアゲ式」の2つの方法があります。「ワリツケ式」とは、あらかじめ分類方法を決めたうえでそれに従う方法であり、「ツミアゲ式」は実際に書類を扱っている人が、自分たちが使いやすいように分類整理するもので、「ワリツケ式」はトップダウン方式であり、「ワリツケ式」はボトムアップの方式といえます。

  「ワリツケ式」 「ツミアゲ式」
基本的な考え ・あらかじめ決めた分類方法に従う
・トップダウン方式
・実際に使う人が便利なような分類する
・ボトムアップ方式
メリット ・同じ基準のもとに整理するため、わかりやすい
・管理者からみて管理しやすい
・業務の内容に応じて整理するため、なじみやすい
・新しい書類でもすぐに分類できる
デメリット ・基準作りに時間がかかるだけでなく、実態とずれる可能性が高い
・押し付けられ感がある
・どこに分類すればよいか迷う場合がある

どちらの方法がよいかは一概には言えず、分類の上位階層は「ワリツケ式」とし、下位の階層を「ツミアゲ式」とした組み合わせが馴染みやすいといえるでしょう。

フォルダー・分類の命名


書類は情報共有し、いつでもすぐに利用できるように整理するものであり、誰でもがどこに分類整理されているか分かるように適切なタイトルをつけることが必須です。これを命名する時にはいくらかの注意が必要です。

・短く簡略に
略称があれば
・あいまいな言葉は避ける
人によって違った意味にとらえられる言葉は避ける
・「〇〇類」、「△△関係」はなるべく避ける
同じものであったり、もともと関係があるものを纏めているものであり、不要な言葉
・「その他」、「雑」などは避ける
何に属するものか不明となる
・中身が多すぎるためわけるときは、単に連番を振らない
「顧客名簿-1」ではなく「顧客名簿(あ-こ)」などとする


ただしこれらは絶対的なものではなく、どのように分類してもいいかわからない時に、命名に時間をかけるのではなく、短期的にとりあえずいれば諸を作るために「その他」はあっても許されると思います。(但し、なるべく早く正規の分類を作ることが前提となります。)

分類の例

三沢氏の「ファイリングシステム」では、分類方法で実用となるのは1.相手先別、2.主題別、3.形式別、4.標題別、5.一件別の5種であるとしており、ほとんどの説明ではこれを基本としています。

1.相手先別
取引先や社内の部門などで整理するもので、相手先の組織名や人名などで分類します。
2.主題別
何が書かれているのかの「何が(テーマ)」をもとにまとめるもので、たとえば「AIの技術動向」や「2020年度採用」などです。
3.形式別
稟議書や契約書などの書類の形式で分類するもので、「販売事績月報」や「リース契約書」などであり、これらのような場合はさらに年度別で細分化されることになります。
4.標題別
主として帳票などで、すでに標題が印刷された書類を纏めるときに使われる方法で、「注文書」「見積書」などがあります。
5.一件別
工事や訴訟など関連するものをまとめるもので、特許出願関係では「包袋」と呼ばれて1件ごとの特許に関するものをすべて纏めています。

当然のことですが、これらの方法は単なる例であり、業務内容によっては臨機応変に変更したり各種組み合わせたものなど、そこでもっとも適した分類を考えることも大切です。

ファイル基準表

ファイルの分類が決まったら、ファイル基準表を作成し、文書の保存期間なども含めて明確にし、共有するように勧められます。しかし、官庁やファイリングに関して外部のコンサルタントに依頼している企業以外では、あまり一般的とは言えないでしょう。
官庁が作成しているファイル基準表は、インターネットで公開されているものもあります。

ファイル基準表には最低限、1.大分類、2.中分類、3.小分類、4.ファイルタイトル、5.保管場所、6.保存年限を含め、その他必要と思われるものを記載します。これを説明したものの中には、機密区分まで記載するように説明しているものもありますが、Topシークレットで担当者以外機密扱いの書類については、一般の人の目の届くものに記載しているのは、秘密管理上好ましくはありません。もし作成する場合は一般の書類とは別に作成し、管理も別にするべきです

 

他部門への波及

「ファイリングシステム」では、対象としている範囲が部門単位であり、そこで最適となる分類法を決めてそれに従うようにするものです。このため、1つの部署で成功したからといって、それと全く同じ方法、同じ分類法が適用できるものではありません。

たとえば、ある装置を販売する会社の場合、営業部門では顧客ごとにニーズや要求される機能が異なるため、どのようなオプションを付けるかや、どのようにカスタマイズするかが大切なため、顧客ごとに細かく管理する必要があり、顧客単位で管理する必要があります。
これに対し開発部門では、全体にどのような要望が多いのか、どのようなトラブルが発生し、どのように対応するかなど、装置の種類(銘柄)ごとに管理することが大切となります。