7.電子ファイルとファイリング
7-1.電子ファイルの落とし穴 (旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)

ファイリングの部屋
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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

書類の整理には、電子ファイルを導入すれば問題はすべて解決するかのような宣伝をしているメーカーがあります。
これが本当であればいいのですが、実際は宣伝文句に書いてある問題点は解決しますが、ここで触れられていないことはほとんどの場合解決されず、そのまま残ってしまいます。
 
ワークフローシステムでペーパーレス?
 

報告書はパソコンで作成し、そのままファイリング。
稟議書は印刷せずメールで回覧し、電子承認。
申請書類はパソコンで入力し、そのまま経理などに送付し処理。

このようなうたい文句で、事務処理の電子化として販売されています。ワークフローと呼ばれるシステムがこれにあたります。すべて電子処理することで、紙の書類が減り、オフィスがすっきりすると言われています。
これが本当であればすばらしいことですが、導入したところでも、あまり紙の書類が減っていると感じられないのが実際でしょう。

これは、自分が作成している書類、あるいは他から回ってくる書類がワークフローに適しているかを考えれば納得できます。また、たとえ社内の書類をすべて電子化できたとしても、社外から受け取る書類、FAX類はどうしても紙のままで残ります。(OA化と紙の消費量)

受発注システムをすべてインターネット(あるいはエクストラネット)で行った場合は、ペーパーレスが達成されますが、この場合は電子帳簿保存法の規定で、税務署に申請を行い、認められたシステムを使うことが義務付けられ、別の問題が発生します。

   
手軽にできる電子化?
 

スキャナーのメーカーは、紙の書類はスキャナーで簡単に電子化できると宣伝しています。
たしかに書類をスキャナーにセットするだけで、自動的に読み取り、電子ファイルができます。簡単でだれでもできるような印象を受けますが、このファイルはどのようにして検索するのでしょうか。
単純なスキャニングだけで、実用に耐えるものを作るには、通し番号だけで検索できるような申込書のように、非常に単純なものに限られます。

そのほか、スキャニングで電子化する場合に注意しなければならない点として、次のようなものがあります。

  • 書類が十分に整理されていること。(スキャニングそのものより、非常に手間がかかる。)
  • ホッチキス、付箋紙の取り扱いを明確に。(再度ホッチキスで止めるなど原状復帰が必要か)
  • 大きさの混在する書類の取り扱い。(A4サイズの書類に混在したB5、A5の紙はA4としてスキャニング?)
  • 黄色のマーカーなどで文字が書かれていない。(モノクロスキャニングでは識別できない)
  • すべてモノクロ2値でのスキャニングでよいか(グレースケール、カラーのスキャニングが必要か?)

ほかにも注意する点が多くあり、そんなに手軽にできるものではありません。

   
キーワードで簡単検索?
 

電子ファイルには、複数のキーワードをつけることができ、このキーワードで目的の書類を瞬時に検索できます。

この文章はたしかに正しいことをいっていますが、正確なことではありません。このキーワードが曲者なのです。
たとえば、パソコン。初期のころはマイコンと呼ばれ、パーソナルコンピュータとも、PCとも書かれます。もちろんこれらは、全角の文字で書かれる場合と半角で書かれる場合も混在しています。このほかにノートパソコン、デスクトップPCなどさまざまな書き方があります。あるキーワードで検索した場合、他の言葉で登録されていた場合は、まず探し出すことは不可能です。
同じものを、人によっていろいろな言い方があるため、あらかじめキーワード集を作成しておき、この中から選択するように制限している場合もありますが、概念そのものが時代とともに変化したり、新しい概念が生まれるなど、キーワード集は常に更新することが必要です。このようなキーワード集を作成することは、大規模なデータベースを対象としたもの以外は非現実的であり、一般の企業などでは特殊な場合以外は使えないと考えたほうがベターでしょう。

   
紙の書類はOCRでテキスト化?
 

OCR(光学文字認識)ソフトの性能が向上し、イメージデータからテキストデータへの変換が容易になっています。
文字の認識率も95%を超え、98%以上としているソフトも多く出てきました。
ワープロで用紙をA4サイズに設定した場合、一行に40文字程度収まります。98%の認識率では、ほぼ1行に1文字は誤認識した文字が含まれます。
そのほかに、l(Lの小文字)と1(数字の一)、O(アルファベットのオー)と0(数字のゼロ)などがどのように変換されているか、画面や印字では見分けがつきません。
また、表になったものはほとんどの場合は、そのままでは使い物にならないと考えるべきでしょう。

そのほか、外字、旧漢字の問題や、原稿の汚れなども認識に対して大きく影響を与えます。OCRに対しどの程度期待するかにもよりますが、実務上使うにはまだ問題が多いといえます。

   
ソフトがバージョンアップされても古いバージョンのファイルは取り扱える?
 

ソフトの新しいバージョンが次々にでていますが、古いファイルもそのまま利用できるので問題は無いといわれています。
古いバージョンのソフトでは機能が制限されるだけで、問題はなさそうですが、実際には微妙な違いがあります。
実際に経験したことでは、Office95のPowerPointでプレゼンテーションを作成していたものを、Office97で使った場合、作図機能を使って矢印を書いていたものが、その矢印の向きが逆になった経験があります。この場合は、表現している内容の意味が逆になってしまいました。
このファイルがデータベース化され、数年後に別のバージョンのソフトで見た場合、内容が誤って伝えられる可能性があります。

ここでは、書類の電子化に際して陥りやすい落とし穴についてまとめています。
電子化した後の、メディアの取り扱いなどについては、「電子保存での注意点」のページにまとめてみました。

 

| Topページ | 0.はじめに | 1.情報の記録 | 2.増加する書類 | 3.作成から廃棄まで |
| 4.書類の整理 | 5.書類の電子化 | 6.電子化書類の活用 |

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| 10.ファイリングを考慮した書類の作成 | 11.マネジメントシステム |
| 12.リスク管理 | 13.ファイリングに関する動き | 14.付録 | 15.編集雑記 |


Updated on 2013/09/28