5.書類の電子化
5-6.電子化プロセス(JIS Z 6016) (旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)

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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

文書の電子化については、2003年にJISとして規定されました。JIS Z 6016「紙文書及びマイクロフィルム文書の電子化プロセス」がそれですが、原案を作成したのが画像情報マネジメント協会(JIIMA)であるため、紙文書とマイクロフィルムが並列に扱われています。その後2008年に一部が改正されました。

紙文書およびマイクロフィルム文書のライフサイクルにおける電子化、保管、活用、廃棄、品質管理、セキュリティ対策など一連の電子化プロセスについて規定するとしています。ここで保管の言葉は、2008年の改正時に追加されたものです。
このページでは、JISの内容についての概要と、解説をします。2003年に規定されたJISでは、紙の書類を預かり、電子化を業務として受託する会社、あるいは一部の会社に設置されている専門の部署の場合だけで、一般の人にはほとんど関係が無かったのですが、2008年に改正されたものには、「電子化文書作成規定及び業務手順の文書化」の項目が追加されましたので、文書管理者などは注意が必要です。

 
用語の定義(一部を抜粋・要約、詳細は「用語集」のページを参照のこと)
  文書
    人の意思を文字その他の記号、画像などの手段で紙、マイクロフィルム、磁気テープ、光ディスク、磁気ディスクなどに記録したもの。
  マイクロフィルム文書
    マイクロフィルムに記録した文書
  電子化プロセス
    紙文書又はマイクロフィルム文書を、電子化する手段及び利用する手順。
  電子化(electronic imaging)
   

紙文書又はマイクロフィルム文書をスキャナなどを用いて電子画像(ビットマップ)化すること。
文書の電子化では、スキャナーで読み取った文書をOCRにより文字として認識させたり、図面ではベクトルデータ化するなど、さらに高度に利用をする場合がありますが、これらの作業で得られたデータは電子文書として、電子化文書とは明確に区別しています。

  電子文書
    パーソナルコンピュータ(PC)、ワードプロセッサ上のソフトなどで作成された文書。
  電子化文書
    紙文書又はマイクロフィルム文書を電子画像(ビットマップ)化した文書。
     
電子化文書作成規定及び業務手順の文書化(一部を抜粋・要約)
  作成規定、管理規定
    文書管理部門及び文書管理責任者は、文書管理規定を作成することが求められています。また、管理台帳の作成も必要です。
  保存期間
    “電子化文書の保存期間を、文書ごとに規定する。”とのみ書かれていますが、保存期間については法律なども考慮した期間の設定が必要です。(「書類の保存期間」のページを参照)
  保存すべき元の文書
   

電子化した後も保存すべき元の文書をを明記するとして、次の文書としています。

法令、文書管理規定などによって紙文書又はマイクロフィルム文書のまま保存することが義務付けられた文書

(色見本など)識別が重要な構成要素となっている文書
厳格な寸法が要求される文書
訴訟中の文書又は訴訟に関するおそれの大きい文書
電子化文書にすることで合理的な管理を失うおそれの強い文書

   

なお2003年版のJISでは、電子化された文書は廃棄の対象とするとして、この除外対象としてあげられていたものです。同じようなことですが、電子化したものは、上記の項目以外は全て廃棄するものとしていたものが、表現が軟らかくなっています。

ここであげられた文書以外にも、歴史的に価値のある貴重な文書は、通常の文書管理とは異なった取り扱いとして保存するべきでしょう。

     
電子化文書の仕様(一部を抜粋・要約)
  変換時の解像度
   

一般文書の場合は200dpi、詳細な復元を要求する文書では300dpi又は400dpiを推奨しています。ただし中間調をもつ場合は150dpiを用いても良いとしています。
電子化文書の解像度ではファイル容量が大きくなるため、文書の利用目的や原稿の文字の大きさなどで最適な解像度を決定するとしています。特にカラー変換については白黒変換に比べてファイル容量が大きくなるため、内容の確認をした上で最適な解像度を決めるのが良いとしています。

  変換時の階調
   

中間諧調を必要としない一般の文書の場合は2階調とし、写真を含む文書の場合は64階調以上とするのが良としています。カラー再現が必要とする場合はRGB各色256階調(16,777,216色)を使用することを求めています。

  ファイル形式
   

入力時の画像状態を忠実に保存し、改ざん防止に適しているTIFF形式またはPDFが望ましいとしています。

2003年版では、“文書管理システムの目的に応じてPDFを用いてもよい”としていたものが、2008年版ではPDFの利用を積極的に認めるようになりました。

     
電子化のための準備(一部を抜粋・要約)
  変換作業前の準備及び点検
    あらかじめ決められた解像度、階調、ファイル形式及び圧縮で実際に文書を電子化し、ファイルを作成したうえで、その画像が適正なものかを確認し、問題があれば再検討し、適正な値を決定するとしています。
  電子化する文書
   

電子文書を電子化文書へ変換する場合、一度紙に出力後、スキャナで変換するか、変換ソフトウェアで電子化文書にするとよい。

この説明はさすがに分かりにくいと感じたのか、注記としてその意味を解説しており、電子文書を電子化文書にして保存すれば、閲覧ソフトへの依存性を低減できるとしています。

  索引の入力
   

索引及び文書の入力を同時に行う方法、索引の入力を先行する方法、文書の入力を先行する方法の3通りの方法があり、利用する目的に応じていずれかを選択するとしています。

ここでは索引の入力方法について触れているだけで、どのように索引を作成したり、検索に便利な索引の作成方法を説明しているわけではありませんが、文書名や索引を設けた登録票を用いることを推奨しています。この索引にはa).文書名、b).文書の作成者名、c).文書の管理部門名、d).文書の作成年月日、e).文書の保存期間、f).電子化文書のキーワード、g).電子化文書のファイル形式、h).文書の関連情報、の8項目を例示しています。
索引についてはJIS Z 6017の「電子文書の長期保存方法」で示されている、ダブリンコアの基本要素に従うと有効であると注記しています。

     
文書の電子化プロセス(一部を抜粋・要約)
  電子署名、タイムスタンプ
   

法令又は文書管理規定によって電子署名又はタイムスタンプの付与が義務付けられている文書については、電子署名・タイムスタンプを付与するように求めています。これについては2003年版には記載がなく、2008年版から新たに加わった内容です。2005年に発表された「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」の中間報告書や、2005年施行のe-文書法などを考慮したものと思われます。

  電子化文書の保存
   

アクセス頻度の高いものは、レスポンスの速い磁気ディスクに、アクセス頻度が減少したものは、レスポンスが多少遅いDVDなどに、ほとんどアクセスのないものは、電磁的記録媒体ごと外部に保存することが望ましいとしていますが、2003年版ではきちんとした項目として書かれていたものが、2008年版では単に注記として書かれているだけです。

  電子化された元の文書などの処理
    次の事項を除いて廃棄処理を行うことが望ましい。
   
    1. 法令、文書管理規定などによって紙文書又はマイクロフィルム文書のまま保存することが義務付けられた文書
    2. (色見本など)識別が重要な構成要素となっている文書
    3. 厳格な寸法が要求される文書
    4. 訴訟中の文書又は訴訟に関するおそれの大きい文書
    5. 電子化文書にすることで合理的な管理を失うおそれの強い文書
     

このJISでは、これらのほかに、画像の品質検査方法や、セキュリティ対策などにも触れていますが、これらについては省略します。

 

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Updated on 2013/09/28