5.書類の電子化
5-1.紙書類の電子データ化
5-1-1.紙文書の電子化動向 (旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)

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これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

紙書類の電子データ化」のページで、電子データ化が便利になってきていると書いています。しかし、一般のオフィスにおける紙文書の電子化は、まだほとんど進んでいません。その原因は電子化データの取り扱い方法が十分には確立されていないこと、電子化データにする方法が、まだ完全とはいえないことなどがあげられます。

電子情報技術産業協会が2003年3月に発行した「オフィスにおける紙文書の電子化動向調査」で、電子化動向についての分析がなされています。この調査はスキャナの使われ方から、今後どのようにスキャナを普及させるかを調べる目的でなれさたもので、調査結果の要旨が公開されていました。この要旨をもとに考えてみます。引用部分を茶色で示しています。
(ここで引用した報告書要旨は、インターネットで公開されていましたが、:現在は公開されていません。)

 
オフィスにおけるスキャナ普及度合い
 

スキャナ普及率は52.4%と、調査前の予測よりも高かったが、タイプ別ではカラーフラットベッドADFなしが31%と最も普及率が高く、本来コンシューマ向けに多く販売されているスキャナがオフィスでも広く利用されている実態が把握された。業種では、製造業の導入が多く、導入率でみるとデザイン、広告、印刷、設計が7割以上となっている。導入率が低いにもかかわらず、「導入意向有り」の比率が大きい、「病院・福祉・医療」、「財務・経理」、「専門的職業」は、今後の有望な市場である。
(ADF:Auto Documennt Feeder、自動原稿送り装置)

普及が50%を越えているのは、スキャナの低価格化が拍車をかけているものと思われます。A4サイズ高精度フルカラースキャナは2万円以下となり、どこのパソコンショップでも手に入るようになりました。
オフィスでの使用をターゲットとしたスキャナは、多少価格は高くなりますが、ADFを標準装備した両面スキャナが普及し始めました。オフィス用のスキャニング精度は実用的な範囲が考慮されてか、パーソナルユースのものに比べて低く抑えられています。

   
スキャナの利用状況
 

業務でスキャンする文書として最も多くあげられたのは、写真が19%と最も高く、ついでマニュアル・仕様書・提案書、図面、パンフレット・カタログ・チラシであった。導入理由としては、「写真やカタログなどの再利用」が69%と最多であり、ナレッジマネジメント等文書管理を目的としてスキャナを導入したユーザーは少なかった。スキャン後の紙文書の処理方法としては、保管場所の余裕がないものの紙文書の視認性が良いことから、廃棄は2割と少なく、紙と電子両方で保有している実態が判明した。

この報告書が出されたのが2003年であり、そのころはまだデジタルカメラがそれほど普及していなかったため、写真のニーズが高かったと思われます。しかし、現在ではデジタルカメラは日常的に利用されているため、写真へのニーズは低くなっているでしょう。同様に、写真やカタログなどもインターネットなどから簡単に入手できるようになってきたため、スキャニングのニーズは現象しているものと思われ、スキャナーの一般的な使い方は、紙の状態でしか持っていない書類を、メールに添付して送るようなケースに移ってきています。
スキャン後の紙文書を廃棄しないのは、もともと紙でしか持っていないものであり、スキャニングしたデータには紙の色や背景色が取り込まれており見難くなっているだけでなく、スキャニングで得られたデータの容量が大きく、取扱いが不便なこともあげられます。

文書管理を目的とするのは、ごく一部で始まったばかりであり、一般のオフィスではまだ特殊なケースといえます。文書の電子化が進み出しているのは、もともと光ファイリングを利用していたところや、書類のマイクロフィルム化を行っていたところが、電子化に変換してきているもので、ほとんどが専門の会社に委託処理していると推定されます。

   
オフィスにおける紙文書の利用状況
 

業務で扱う紙の保存文書として最も多いのは、「マニュアル・仕様書・提案書」、「見積書・契約書・請求書」、「会議等の配布資料・日報・週報」、「稟議書・連絡書等の回覧資料」、「伝票」、「図面」の順であった。紙で保管する理由として、最も多かったのは「紙のほうが見やすい」、「法律的な紙での保管義務」であった。

保存文書の種類・順については、まあ妥当な結果となっています。しかし、紙で保管する理由は、本当に「紙のほうが見やすい」でしょうか。アンケートに対する答えとしては、もっともらしくはありますが、少し違うのではと感じます。
うまくスキャニングができないため、何度もやり直しが必要で、非常に手間がかかる。取り込んだ複数ページの書類を取り扱えるソフトが、アクロバット程度しか無い。(マルチTIFFファイルを作成したり、閲覧するためのソフトが一般的でない。)電子化データを簡単にデータベース化し、取り扱えるソフトがほとんど無い、などの理由が本当のところだと思います。
また、法律的な紙の保管については、その後 e-文書法が制定されてほぼ全ての書類が電子保存できるようにはなりましたが、またまだその意識が一般的になっていません。社内規則などでも書類を電子化保存は想定されていないことも理由に挙げられるでしょう。

   
スキャナ需要喚起のための内的用件
 

現状では、大半が単純な利用にとどまっていることから、ファイリングソフトやOCRソフトとの連携など、電子化後の再利用の効用を広く認知させる活動や付加価値の提供が必要である。また、改善項目としては、操作性の改善と電子化データの圧縮率向上が大きな課題である。

スキャナそのものの性能は、一般には充分なものになっています。印刷業界の人で無い限り、フルカラーで400dpi以上の性能は不要ですし、受託業務を行っている会社でなければ、ある程度以上のスキャニングスピードは必須条件とはなりません。
また、操作性の改善は当然ですが、その対象としている操作性が何かをしっかり見極める必要があります。電子データの圧縮率向上は望ましいことですが、最適なスキャニング条件を簡単に選択できるようなマニュアル作成の方が大切と思います。

   
書類電子化の環境
 

e-文書法の制定などで、書類の電子化に弾みがつきましたが、一般のオフィスまではまだ電子化保存についての理解は進んでいません。
個人向けのスキャナの普及だけでなく、オフィス向けのスキャナやコピー、スキャナ、FAX機能も備えた複合機も低価格化が進み、普及し始めており、電子化の環境は整っているように見えます。
しかし、電子化したデータ容量が大きい、手軽にデータベース化する方法が無いなどのため、一時的な利用から抜け出せてはいません。

   
書類の電子化を進めるために
  書類のスキャニングを行うにあたり、一般の人でもスキャニングそのものは簡単にできますが、最適なスキャニングは難しいことに問題があります。
スキャナを使おうとする人は、ある程度パソコンを使いこなす人のはずですが、このような人が全てイメージデータの性質や、取り扱い方法を知っているとは限りません。書類のスキャニングにあたってのガイドブックのようなものが全く無いことも原因の一つかもしれません。
文字・線画だけの書類のスキャニング、モノクロ写真のスキャニング、カラー写真のスキャニング、パンフレットなどのカラー印刷物のスキャニングなど、代表的なスキャニングにあたっての操作法が簡単に理解できるようなガイドの作成が望まれます。
また、紙の背景色の除去やノイズ除去、傾き補正などを簡単にできる安価なソフトの普及も必要です。

 

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Updated on 2013/09/28