13.ファイリングに関する動き
13-6.カルテの電子化
(旧「ファイリングの部屋」アーカイブ)
ファイリングの部屋
HOMEへ

 

これまで hi-ho.ne.jp で公開していた「ファイリングの部屋」を、この新しいドメイン(filingroom..jp)にもコピーしました。不要と思われるページは削除していますが、内容はそのままです。
従来のアドレスにも、当面は残しておきますが、できるだけこちらを利用していただければ幸いです。

 

医療関係では、法律により保存が義務付けられているものが多くあります。X線フィルムなどのデータ類とともに、診療記録であるカルテについては、そのデータについての参照が必要であり、参照が容易な保存方法が大きな課題となります。
 
カルテの電子化と電子カルテ
 

電子カルテシステムが普及し始めていますが、これは、記録を紙に書くのではなく、直接パソコン等のコンピュータに入力するもので、初めから電子データとして記録されます。
これに対しカルテの電子化は、一旦紙に書いたカルテをスキャニング等で電子化しようとするもので、両者は明確に区別しておく必要があります。

   
これまでの主な経緯
 
88年 5月 「診療録等の記載方法について」 厚生省健康政策局などよりの通知
  作成した医師等の責任が明確であれば、ワードプロセッサ等いわゆるOA機器により作成しても良いとした。(この通知は、99年 4月の「診療録等の電子媒体による保存について」によって廃止されました。)
   
94年 3月 「エックス線写真等の光磁気ディスク等への保存について」 厚生省健康政策局長通知
  エックス線写真等に代わって、光磁気ディスク等の電子媒体に保存しても差支えないこととされた。
   
99年 4月 診療録等の電子媒体による保存について」 厚生省健康政策局長等よりの通知
  診療録等を電子媒体で保存する場合の基準が示された。
   
02年 3月 診療録等の保存を行う場所について」 厚生労働省医政局長、保険局長通知
  電子媒体の外部保存を認めるとともに、これまで取り扱いが明示されていなかった紙媒体のままでの診療録等の外部保存について、一定の基準を満たす場合には、これを認めることとされた。
   
04年 2月 e-Japan戦略U加速化パッケージ
  診療情報の電子化など医療分野でのIT 利用促進として、処方せん、診断書、出生証明書をはじめとする様々な診療情報の電子化など医療分野のIT 利用促進を図るための方 策を包括的に検討し、2004年9月までに結論を得るとしている。
   
04年11月 e-文書法 成立
   
05年 3月 厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」公布、施行
   
05年 3月 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
  e-文書法への対応として、電子保存の要求事項や診療録をスキャナ等により電子化して保存する場合などについて指針を示している。
   

電子データとして保存が可能なもの

 

94年の通達により、エックス線写真に代表される医用画像の電子保存が認められるようになりました。さらに99年には、診療録まで拡大され、カルテなども電子的に保存することが可能となりました。
さらにe-文書法の制定により、スキャニングによる電子化を含め、ほとんどの文書の電子化が可能となりました。(詳しくは厚生労働省が出した通知「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律等の施行等について」を参照してください。)

   

電子化が制限されているもの

 
  • 処方せん:無診察治療の防止をする必要があること等から電磁的記録による作成を認めないこととし、電磁的形態としてスキャナ保存のみを認める。
  • 訪問看護指示書等:患者等による訪問看護事業所の自由な選択の保証の観点等から、電磁的記録による交付の対象としない。
  • 麻薬等の譲渡証:譲渡する際その場で現品と譲渡証内容を確認する必要があるため、電磁的記録による交付にはなじまず、対象としない。
   
スキャニングによる診療録等の電子化
 

医療に関する業務等に支障が生じることのないよう、保存義務のある書類としての必要な情報量を確保するため、一定の規格・基準を満たすスキャナを用いることとしています。
診療情報提供書等の紙媒体の場合は、300dpi、RGB 各色8 ビット(24 ビット)以上でスキャンを行なうこととしていますが、あくまでも医療に関する業務等に差し支えない精度が必要であり、その点に十分配慮することと、ガイドラインの規定にあいまいさが残っているように感じられます。
一方で、もともとプリンタ等で印字したもので、スキャン精度をある程度落としても見読性が低下しない場合は、スキャン精度を下げることもできると、柔軟な姿勢も示しています。

   

医療情報の電子保存については、改ざんなどに対して非常に注意を払い、保存システムについてもかなり厳しい条件がつけられています。これに対して紙のカルテについては、書き換え(改ざん)についての規制は無いようです。書き換えても、倫理上の問題はあるにしても、公文書偽造や、有印私文書にも該当しないため、法的な制約はなさそうです。
乱筆の医者が書きなぐったカルテを、その字を判読できる事務員などが解読し、書き換えるあるいは注釈を加えて、投薬指示を出すことなどは日常的に行われているようです。ここで書き間違えなどが起こったときの責任は、どこが取るのでしょうか。新しいものにだけ異常ともいえるような規制を設けることは、なにか釈然としません。

 

| Topページ | 0.はじめに | 1.情報の記録 | 2.増加する書類 | 3.作成から廃棄まで |
| 4.書類の整理 | 5.書類の電子化 | 6.電子化書類の活用 |

backnext| 7.電子ファイルとファイリング | 8.LANの活用と問題点 | 9.ファイリング意識の向上 |
| 10.ファイリングを考慮した書類の作成 | 11.マネジメントシステム |
| 12.リスク管理 | 13.ファイリングに関する動き | 14.付録 | 15.編集雑記 |


Updated on 2013/09/28